「藤子・F・不二雄短編集 SFものがたり ある日、悪夢が…編」 (藤子・F・不二雄 / 小学館 MyFirstBig) ISBN:4091080618

少し(S)・ふしぎな(F)物語を集めた短編集。
8編収録。
今回は一変する価値観を主軸にした作品が集められています。


小道具によって引き起こされるドタバタを描いた作品よりも
こうして物語そのものを動かそうとする構成になっているほうが面白いですね。
今では新刊で手に入らないのが残念ですが、古本屋では見つけることもあるのではないでしょうか。


「コロリころげた木の根っこ」
暴君である夫に耐える妻、そこここに見え隠れする少し抜けた行動。
これが最後のコマで童謡と共に反転します。
これは怖いよ…


「流血鬼」
価値観反転の見本作品。
吸血鬼だらけになってしまった世界において吸血鬼ではない人間を
流血鬼というってのはちょっとしたコロンブスの卵だな。


「気楽に殺ろうよ」
これも価値観反転系、ってこの巻はそれがテーマですから当然か。
しかしこの世界ではなかなか科学の発展とか望めそうにないのですが、どうなんでしょうか。
あまりに強引な欲への解説とか、あっさりこの世界観を受け入れた主人公にも変な感じが。


「ある日…」
当時の世界情勢を反映したメタもの。
こういった結末を迎える作品はこの短編において時折見られますね。
作中作品の「STAR WALK」は笑わされました。
こういった経験、よくやっているんですよ…


「アチタが見える」
予知能力の片鱗を見せるチコちゃん、
様々な人の未来を見てしまい、ある人物の事故までも予知してしまう。
これって回避不可なんですかね、恐ろしいな…
あと、ラストのは予知ではないような気がする。


「タイムマシンは絶対に」
これは一見違うカテゴリに見える作品なのですが
反転する価値観というテーマにぴったりですね。
そう、今この瞬間にもタイムマシンはできているのかもしれません。


「福来たる」
今の世では福の神は無力このうえないですね…
確かに食料を捨てている現代人は信じられない気分でしょう。
逆の話がドラえもんでありました。


「マイ・ロボット」
ロボット組み立てキットを完成させて出来上がったのは…
こういった自我を形成するロボットというものは過去の話にも見られるものでしたが
嘘を他人にも、自分にもついてしまうというところが新しい。