雷の季節の終わりに (恒川光太郎 / 角川書店)

雷の季節の終わりに

雷の季節の終わりに


異世界・穏(おん)で暮らす少年、賢也。彼は「風わいわい」という妖怪に取り憑かれている。
そして穏の地には冬と春の間にもうひとつの季節がある、
雷の季節と呼ばれるその季節は人がよく消える、賢也の姉もそんな季節に消えたのだ…
305ページ


前作「夜市」(感想)と同じような世界観。
軽いファンタジー要素をはらんだところと、まさに現代社会を背景にしたところが
同じ物語の中に破綻せず同居しています。


穏という土地の特異性は序盤からあますところなく表現されていて
生者と死者が隣り合っているところや、隔離されていたり、
世界に全く知られていないところなどが繰り返し強調されて
現実のものでないところと、そして住人の穏やかそうなところが
現実世界の住人である私を魅了してきます。


後半でもうひとりの語り部となる茜は現実世界の住人で、
まさに現代社会の問題を具現化したような環境にあって
これがどのように話にからむのかが見えてこないのですが
中盤の茜の友人が見せてくる世界が穏の世界観と重なりを見せだすと
一気に物語が佳境になってきます。


正直この唐突っぷりには面食らいましたが
最後まで賢也と茜の接点が見えてこないところにだまされた感じです。
だけどここらへんにはもうちょっと枚数をかけてほしかったかな。
あと穂高


やはりこの世界観が好み。
伊坂幸太郎の「オーデュポンの祈り」ASIN:4101250219 に似てるかな。
★★★★