「アヒルと鴨のコインロッカー」 (伊坂幸太郎 / 東京創元社) ISBN:4488017002

大学入学が決まった椎名が、越してきたアパートで最初に出会ったのは猫、そして河崎という男。
彼は「本屋を襲わないか」と持ちかけられ、当然断る事になるが、
いざ決行の当日、本屋の裏口でモデルガンを構えていたのだ…


物語は椎名が語り部の「現在」パートと、
琴美とブータン人のドルジを恋人とする女性を語り部とする「二年前」パートに別れています。
この二つのパートは短い間隔で交代しながら進んで
最後には交わっていくというごくオーソドックスな構成。


しかしその中に施された仕掛けは丁寧で、美しいです。
どこか夢を見ているかのような情景描写や
しゃれっけのあるセリフまわしなどは今までの作品と変わりませんが
そこに細やかに隠されたフレーズが生きてくるところなどはうまいです。
見事などんでんがえし…というほどのものではないかもしれませんが
直角に折れ曲がったかのような曲がりっぷりに感服。
少ないながらも魅力的に描かれた人物像に感情移入できること間違いなし。


前作にして直木賞候補作「重力ピエロ」 ISBN:4104596019感想)をあっさりと越えた傑作でしょう。
面白かった。