「さよなら妖精」 (米澤穂信 / 東京創元社) ISBN:4488017037

1991年・春。
高校三年となった守屋路行は学校の帰り道、ある少女に出会う。
マーヤというその少女は東欧から見聞を広めるために日本にやってきたという。
彼女は彼の友人たちとともに様々な謎に遭遇し、
日本の文化を見つめ直す機会を得る。
そして最大の謎、マーヤ自身の謎は彼女の帰国後、判明することとなる。
310ページ。


「スニーカーミステリ倶楽部」というレーベルが角川スニーカー文庫に登場したのは2001年。
残念ながら今は新刊も出版されず、失敗に終わってしまった試みでした。
ホラーテイストの装丁(背表紙真っ黒でしたし)が印象よくなかったのも原因のひとつだったのかもしれません。
しかし、このレーベルで出会った作品にはかなりの衝撃を受けたものです。
その作品のひとつが「アクアリウムの夜」(稲生平太郎ISBN:4044275017感想)で、
もうひとつがこの本の作者、米澤穂信氏の作品でした。
その2作品は↓
氷菓ISBN:4044271011
愚者のエンドロールISBN:404427102X
この3作品に出会えただけでも私にとっては忘れられないレーベルです。
(感想文がどれについても見当たらないのが気に食わない… 今度書きます)


青春ミステリといったジャンルで、
かつ身近なテーマをミステリ仕立てに話を作り上げる独特の手法は
爽やかな読後感と、どことなく懐かしさを感じさせる内容で
おおいにきにかけさせてくれるものだったのを覚えています。


そんな作者の久々の新作は、
そんな過去2作のテイストをしっかり受け継ぐ内容で
いやみのないミステリでした。


しかし登場人物の言動などが過去のシリーズとそのまんまダブって見えてしまったり
謎を謎のまま放置してしまうものが多く、
正確な解答が示されなかったりするところは好みの差かもしれませんが
個人的にはしっくりこなかったです。


高校生たちの日常を描き、その追憶や憧憬を思い起こさせる
ノスタルジックさがこの作品のテーマ。
まずは過去2作品を手に取って、それから読むのもいいですし、
書店から消えてしまう前にこの作品を手に取ってみるのもいいでしょう。
物足りないのは事実ですが、すごくいい作品でした。
今年でるという書き下ろしも、待ってます。


そしてこの著者コメントにも味があるなあ。
ますますファンになりましたよ。