不思議のひと触れ (シオドア・スタージョン / 河出書房新社) ISBN:4309621821
SFというよりは、人間の持つ力のドラマという言葉がふさわしい、
「奇想コレクション」第二弾の短編集。
10編収録、360ページ。
解説だけで30ページくらいあるのも珍しいですね。
しかし、これがあるおかげで作品に対する
思い入れもやや違ったものになりました。
なりを潜めていてもどこかにSF的なものがひょっこり顔を出してくる作品も多く、
「もうひとりのシーリア」「閉所恐怖症」などがそんなところで、
最初からSFっぽい顔をしてその実物語は違うところにある
「雷と薔薇」「孤独の円盤」などもあって内容は意外とバラエティ豊か。
好みの作品はデビュー作にしてたった4ページの「高額保険」
ブラッドベリ風味の強い「影よ、影よ、影の国」
まるで日本人が作ったのではないかと思わせるコミカルな「裏庭の神様」
どこまでも美しい「不思議のひと触れ」
尋常ではないスケールが感じられる「閉所愛好症」などですが
他の作品も全てどこかに気に入ったところがあるという
アベレージの高い(100%かも)作品集でした。
人間と真正面から向き合ったかのような
真摯な作品ばかりで、ちょっと疲れるけど印象深い読後感です。