禁じられた楽園 (恩田陸 / 徳間書店) ISBN:4198618461
大学の建築課に通う平口捷は同級生でありながら天才芸術家の烏山響一に招待され
同時にやはり響一に招待された律子とともに
熊野の山中に建設された野外美術館へと足を踏み入れた。
雰囲気作家、という言葉を作るとしたらやっぱり恩田陸氏の作品が真っ先に頭に浮かびます。
この作品も居心地の悪さがいたるところで感じられて
そこここで描写される妄想とも幻覚とも取れるイメージが
どうにもこの作品を現実の感覚から乖離させています。
後半部分は野外美術館のインスタレーションが舞台になって
妙に具体的で現実的な仕掛けとその中で展開される幻覚的な描写が
際立って相対している感覚が面白かったです。
ホラーとしては多少弱いのですが、この居心地の悪さは絶品。
ラストの方向性にはびっくりとなかなか楽しませてくれました。