審判の日 (山本弘 / 角川書店) ISBN:4048735438

審判の日

作者の長編「神は沈黙せず」 ISBN:4048734792 の原案となったのであろう短編集。
ジャンルはSF・ホラーの部類でしょう。
5編収録、265ページ。


なかなかお見事でした。
以下順番に。


「闇が落ちる前に、もう一度」
ある重大な事実に気づいてしまった研究者の恋人へのメールの内容とは


まああまりどうってことのない内容で、「神は沈黙せず」でも使われた内容。
これは正直面白くなかった。
★★

「屋上にいるもの」
雨の日、天井から聞こえてくる誰かがコンクリートを叩くような音。
ここはワンルームマンションの8階、上にあるのは立ち入り禁止の屋上だけだ。


お見事にきまったなという印象。
伏線とネタがしっかりかみ合わさってこれぞまさしく正統派。
ホラーのお手本にしたいような(書いちゃった)わけわからなさ、
そしてシュールなラスト。
その全てが好みにはまりました。
今年のベストにしちゃう。
★★★★★


「時分割の地獄」
AIアイドル、真野ゆうなが「俺」の番組へゲストとしてやってきた。
「俺」はゆうなには心がないとさんざん言ってきたのだが…


このAI、ゆうなの行動や考えがかなり特殊で面白いです。
そして同時にこんなアイドルだったらそりゃ人気も出るだろうなあといった感じも受けました。
いろんな意味でこの作品も好きな構造になっていました。
★★★★


「夜の顔」
平凡な会社員・中臣勝也は、婚約者の実家に挨拶に行った帰り道、夜の街を車で走っている時、奇妙なものを目撃する。
路地の奥から彼を見つめている中年男の顔…。


作者はこういうネタが好きなんですね。
なんか、どうにもならなさがたまらない。
★★★


「審判の日」
ある日、世界の人間の99.8パーセントが消失した。
そしてゆるやかに滅びの時を迎える残された人類の運命は…


なんてマクロに書いてますが、物語はミクロに収まっています。
テーマが予想と違うところに着陸するのですが、実はそんなに驚くところはありませんでしたね。
面白いアイデアなのですが生かしきれなかったかな。
★★★


総合は
★★★★
当然ベストは「屋上にいるもの」