まだ見ぬ冬の悲しみも (山本弘 / 早川書房) ISBN:4152086998

まだ見ぬ冬の悲しみも

表題作を含むSFを中心とした短編集。
6編収録、346ページ。


正直、「審判の日」ISBN:4048735438 と比べると小粒でちょっと物足りないです。
http://d.hatena.ne.jp/G_CAR_STK/20041001#p1 (感想)
決してつまらなくはなくて、充分に面白く読めるのですが
どこかにブレイクスルーを求めてしまうのは
「審判の日」収録の「屋上にいるもの」あたりが好きなので
純粋にホラーを求めているせいかもしれません。


ちょっとずつ感想
「奥歯のスイッチを入れろ」
タイトルから想像できるとおり、加速装置を付けた人の話。


なかなか面白いですね、加速装置を付けた人が運動時にかかる慣性の問題とか
空気抵抗がなんたらとかそういう現実的な問題に対してどう対処すべきかという作品。
あー、好きなんだろうな、という感じです。
でも予定調和通りに終わってしまって驚きは皆無なのが物足りない。


「バイオシップ・ハンター」
異星人の駆る宇宙船・バイオシップに乗り込んだ地球人ジャーナリストの話。


異文化交流的なお話で、バイオシップの描写(宇宙船なのですが、生物です)が面白い。
反面、ストーリーは素直すぎて驚くくらいです。
これも平均点をキープしているだけという気がする。


メデューサの呪文」
詩人が出会った文明が崩壊し、都市は風化した星で出会った武器の話。


こういうアイデア勝負の話は面白いです。
どうにも言語化できない(できるとこちらの命が危ない)話なのもミソですねー、
またバーチャルリアリティの話かよ!
と思わせておいて裏をかかれました。


「まだ見ぬ冬の悲しみも」
実用化されたタイムトラベル技術、主人公は被験者に選ばれて半年前の世界へとぶが、
そこに待っていたのは死滅した世界だった…


物語だけ見るとなかなか面白そうなんですが
話の中心点が思いっきりぶれてしまっていて
ここまでじっくり書く内容でもないんじゃないかなあ。
と思っちゃいます。
つうか結果だけ見てそうなってしまった現実をつかむのは無理だと思います。


シュレディンガーのチョコパフェ」
あるマッドサイエンティストの発明によって世界は破滅する…


すんません、これも水増し感が漂うんだよなあ。
なんというか、ここまでねちっこく書かなくても終えられるんじゃない。


「闇からの衝動」
キャサリンはデヴィッドに復讐するため、悪魔を呼び出す決心をした。


この作品は純粋なホラー。
掛け値なしに面白かったです。
作者は荒唐無稽なアイデアをアイデアを具現化できるのがSFの面白さと認識しているようですが
それはホラーに関しても全く同じことが言えると思います。
要はどういったジャンルになるかはその書き方次第ということにもなりますが。
SF的なガジェットが入るとどうも余計な薀蓄が邪魔臭く感じられるので
そういった点があまり見えなくなるホラーのほうが私の好みに一致します。


SFでホラー書いてみたらどうでしょう。
★★★