「羆嵐」 ISBN:4101117136 (吉村昭 / 新潮文庫)

ある北海道の開拓村を襲った熊の恐怖を描いたドキュメンタリー小説。
226ページ


2日で6人もの人間が犠牲になったという事実も恐ろしいのですが、
熊が人間の機微を理解できないとはわかっていても、
犠牲者の通夜が行なわれている場所に乱入してくる熊がおぞましいです。


中盤近隣の村から集められたハンター達が「見えない恐怖」に惑わされるシーンがありますが、
はた目から見るとこっけいに見えてしまうようで、
読んでいるこちら側までその恐怖が伝わってきました。


そして何よりも熊そのものの存在感がすさまじく、その表現は印象深いです。
初めて読んだ吉村昭作品でしたが、多くの作家が影響を受けた理由が分かるような気がします。