「美女」 (連城三紀彦 / 集英社文庫) ISBN:4087472132

人と人との危うい関係を描いたミステリ作品を収録した短編集。
8編収録、350ページ。


今さら感想ということになってしまいましたが、
いいものはいつ紹介しても問題ないでしょう。


白眉はなんといっても「喜劇女優」。
七人の男女の電話のやりとりを描いた作品ですが、
途中読みにくくなり、そして何が起きたのかが把握できなくなり
最初から読み直すこと数回。
それでも読む価値は充分にあると思いますよ。
やっぱり連城三紀彦氏というのは純粋なミステリ畑というよりは
ライトノベルのような実験的作品にすさまじいものが隠されているようです。
悪夢の世界をいったりきたりするような作品。
いたるところで使われる「超絶技巧」という言葉はこの作品がふさわしいかも。


家族がちょっとずつきしんでいく「他人たち」
偶然という言葉で言い表してしまってはもったいない「夜の右側」
意地悪すぎて絶句する「夜の二乗」
女性三人が色濃く個性豊かに描かれ、インパクトの強い「美女」
と気に入った作品を挙げるときりがないのです。


ただし、やはり根幹にあるのは男と女の愛憎劇なので
読み続けるとやや疲れてしまうのも事実。
じっくり読んでいったほうがいいでしょう。