異次元を覗く家 (ウィリアム・ホープ・ホジスン / ハヤカワ文庫SF) ISBN:4150100586

アイルランドの山奥にある村で発見した巨大な穴とその奥にあった廃墟。
そこで発見した驚くべき内容の一冊の本。
ある老人が書いたと思われるこの驚愕すべき内容の本をまとめたのがこの本である。
250ページ。


なんの予備知識もなくこの本を読んだら「クトゥルーもの」の本ですね、で済まされてしまいそうなのですが
1908年に書かれた作品ということを知ってしまうと驚かされます。
「邪悪な雰囲気」「不浄なもの」といった表現や異世界をとめどなく彷徨うさまなどは
まさにクトゥルーものの定番ですし、そういったもののもととなったことも想像できます。


作品の内容は残念ながら散逸した内容がそれぞれ独立してしまっていて
あまりそれが物語を有機的につなげていないのが残念です。
特に意味が分からないのが「眠りの海」の章でしょうか。
作品中頻繁に現れる「ブタ人間」は作者の別作品「幽霊狩人カーナッキ」ISBN:4042700012 (感想)にも現れる異形のもので
そういったイメージとして共通した世界観を持っているのかなという印象を受けました。


読んで面白いのは圧倒的に「幽霊狩人カーナッキ」のほうですが、
今は入手困難なようなのがとても残念です。
角川書店にはここらへんの作品で復刻してほしい作品がいくつかあるなあ。


異世界の不思議で鮮烈な印象は素晴らしいものがありますので
そういった個々のいいところをうまくまとめられなかった作品というところでしょうか。