太陽の簒奪者 (野尻抱介 / ハヤカワ文庫JA) ISBN:4150307873

太陽の簒奪者

2006年、突如水星の地表に塔が設置される。
塔から吹き上げられた鉱物資源はやがて太陽をとりまくリングを形成し、
地球への太陽光をさえぎり始め、人類は存亡の危機に瀕することとなるのだが…
324ページ。


さすがに和製SFは読みやすいです、こういった作品からSFに入っていくのがいいんじゃないかなあ。
夢と希望にあふれたSFというものはほんとにいいものです、
少なくとも退廃や絶望に覆われた世界よりはよっぽどいい。
この世界ではビルダーと呼ばれる未知の異星人におそれる世界が描かれますが
決してそこにあるものは絶望ではなく、
対話やあまつさえ撃退さえも試みようと切磋琢磨する様子です。
それがいいですね。


そしてなんとも奇妙な読み応えなのが
宇宙という壮大な舞台があるというのに
ナノテクノロジーが大きくクローズアップされているところでしょうか。
こうしてみると決して科学の分野では相反したものではないのだなということを再認識させられます。
こういった細かい描写はやっぱり日本人作家だからなんでしょうかね。


ブルダーと呼ばれる異星人の正体もなかなか奇抜で
その一種異様とも思える行動パターンも実にあっさり納得させられます。
そこらへんはミステリ的な要素も含んでいると言えるかもしれません。


なんといっても読みやすいのは大きな利点でしょう。
★★★