七つの黒い夢 (アンソロジー / 新潮文庫) ISBN:4101281513

七つの黒い夢

乙一恩田陸北村薫誉田哲也西澤保彦桜坂洋岩井志麻子の七人の作家が描く
ダークファンタジーアンソロジー
7編収録、208ページ。


タイトルからしてホラー系に属する短編集かなと思っていたのですが
どうやらそうでもないのがちょっと意外でした。
以下個別に感想


乙一「この子の絵は未完成」
まあ白乙一に入る部類の作品なのでしょうが、とても「らしい」といったところ。
設定や異常な能力の発現や使い方などまさにこの人そのものです。
しかし、薄味で物足りないですよ、このページでは仕方ないのか…
初出が2002年12月ということで最近書いたものでもないのか。
新作、読みたいよ。


恩田陸「赤い毬」
完全に幻想ものになっていて、独特の世界がざわざわと広がってくるさまはさすがです。


北村薫「百物語」
ダークファンタジーかな、と思ったらこれはタイトル通りの怪談で
ここに現れるものがなんだか最後まで分からないのは良かったかも。


誉田哲也「天使のレシート」
この作者の作品は初読。
特異な設定が目を引きますね。
もうちょっとマクロな展開をするのかと思ったらその逆に落ち着いたのは意外でした。
これは作者が違えばもっと違うオチになりそうです。


西澤保彦「桟敷がたり」
ミステリ風味になっているのはこの作者だからなのでしょうか。
最初から最後までその真相が読みきれず、挙げ句に心底ダークなのはどうしたもんか。


桜坂洋「10月はAPAMで満ちている」
明らかにダークでもファンタジーでもない。
驚くべきことにミステリといってもいいんじゃないでしょうか。
短いページにぎゅっとつまっていて最も楽しめましたよ、
しかしその割には登場人物にあまりに血が通ってないのが惜しいな。


岩井志麻子「哭く姉と嘲う弟」
えー、ダークさが違うところに向いているよなー。
物語が妙な入れ子構造になっているのには意味を感じないのですが…


やはり1作づつのページ数が少なすぎるのでこちらも物足りないです。
★★★