一角獣・多角獣 (シオドア・スタージョン / 小笠原豊樹 / 早川書房) ISBN:4152086815

一角獣・多角獣



つうか、この人がブラッドベリと同じカテゴリで語れるわけがない。
SF、というにはサイエンスっぽくはなくてホラーというには怪奇的ではないところが
なんとももどかしい幻想小説集。
10編収録、299ページ。


299ページとページ数はそれほど多くはないのですが
文章が二段組みというだけでなく、独特のテンポなので
ゆっくりとしか読めませんでした。
以下全てではありませんが個別に感想。


「一角獣の泉」
ファンタジー要素が大きくからんだ物語ですが
どうにもつかみきれないです。
特にリタがデルに対して行ったことが意味不明。
それに対してのバーバラの純真さというものをきわだたせているのでしょうが、
最後までそれさえも信用ならなかったのはさすがにうがった見方だったか。
★★★


「熊人形」
うーむ、きわどいところなんですが
妄想なのか、現実なのかが判別つきづらいところがこの物語のキモでしょうか。
ホラーとしてはまっとうな結末に落ち着いていて印象はやや弱いかも。
★★★


ビアンカの手」
「海を失った男」を読んでないので初読。
変態小説。
ここまで執拗に描かれる手の描写を読んでいるとこちらまでトリップしそうです。
★★★★


「孤独の円盤」
以前読んだな。
かなり好きな部類の作品ですが、これは作品のメッセージ性が強いせいかもしれません。
なんだか青春小説のような手触りが独特です。
★★★★


「ふわふわちゃん」
どんな話になるんだ、と思ったらしゃべる猫。
これだけだったらただのかわいらしい話ですか、と思ったのですが、
どうにもみんなどす黒い。
ひねったラストは驚かされます。
★★★★


「反対側のセックス」
スタージョン小説によく出てくる概念、「シジジイ」の解説にもってこいでしょう。
しかし内容はメロドラマに近いというなんともミスマッチな一作。
★★★★


「監房ともだち」
B級SFホラー。
ひとこと、これですむ一作で、徹頭徹尾そんな内容で分かりやすすぎ。
難解だったり、繰り返し読まないと理解できなかったりする中でこの内容だけで
満足できてしまう私はとことんダメな小説読みなのかな。
★★★★


「考え方」
これはなんともショッキング。
ひどい、ひどいよ、ラストの衝撃はこの作品集では最も大きかったかな。
★★★★


独特の幻想小説、読み手を選びそうです。
ベストは「反対側のセックス」と「監房ともだち」。
★★★★