向日葵の咲かない夏 (道尾秀介 / 新潮社)

向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏


小学4年のミチオは先生に頼まれて同級生、S君の家に夏休みの宿題などを届けに行くとに。
そしてS君の家でミチオが見たのはS君の首吊り死体。
あわてて学校へ戻り先生にそのことを話すと先生は警察と一緒にS君の家へ行くが
そこにはなにも残されてはいないのだった。
その後、ミチオの元にクモに生まれ変わったS君がやってきて「僕の身体を見つけてほしい」と頼むのだった…
268ページ


この全くの不条理展開にクラクラさせられますが
文章がすごく読みやすいためかつまづくことはなく進みます。


特におかしな要素は前半部分に大きく映し出されており、
クモに生まれ変わったS君もそうですが
3歳のくせに妙にしっかりしすぎな妹ミカや、
何故かミチオに対して虐待の素養を見せてミカを溺愛するミチオの母親、
腰をいためたS君の近所に住む泰造、
呪術的な存在で謎めいたヒントをよこすトコ婆さんなど
個性的なキャラクタ満載。
しかしそのキャラクタ達はどういうわけかだんだん存在感がなくなっていったりして
風呂敷を広げすぎたような感覚が全体を覆ってきます。


しかし聡い(すぎるような気もしますが)ミチオによって
描き出される事件の全容はとち狂っていて面白いです。
どんでん返しも数回あるのでまさに最後まで息を付かせぬ展開。
これであんな前向きなラストになるとは、ちょっと意外でした。


浮世離れした物語を楽しみたければ。
★★★★