反対進化 (エドモンド・ハミルトン / 中村融 / 創元SF文庫) ISBN:4488637035

反対進化

「キャプテン・ヒューチャー」や「スター・キング」シリーズで知られる
エドモンド・ハミルトンのSF短編集。
10篇収録、398ページ。


さすがに古いなあと感じさせる作品もありましたが、
そういったものを感じさせない作品には深い感動がありました。
以下個別に。


「アンタレスの星のもとに」
メリックは物質転送機による惑星間移動の実験対象に選ばれた。
転送先は赤色巨星・アンタレスを回る惑星のひとつだ。


さすがに都合がよすぎますね。
典型的な古風のヒロイックファンタジーで作者の思い通りって感じです。
あまりにテンポが良いので逆に笑ってしまいmした。
これの続編にあたる作品も一緒に収録してほしかった。
★★


「呪われた銀河」
ゴシップ新聞記者のギャリー・アダムスは隕石の落下を目撃する。
彼は喜びいさんで落下地点と出向くのだが、そこには完璧な幾何学体が存在していた…


新聞記者と科学者の噛み合わない会話が笑わしてくれますが
ひとつ間違えればホラーに転がりそうな作品です。
つうかこの題材だったらホラーにしてしまったほうが面白いんじゃないかなあ。
★★★


「ウリオスの復讐」
アトランティスの科学者・ウリオスは脳を移植することによって
不死になるという実験に成功する。


脳移植によって不死となるという内容ですが
追うほうも追われるほうもどちらもあまりにぬるい行動ばかりで
読んでいてちょっとイライラさせられました。
★★


「反対進化」
人は進化してきた、そしてその進化の源となるのは
放射線による遺伝子に与える大きな影響が大きな原因なのだ。


常識というものを破壊するSF。
こういった感覚勝負のものはハマると面白いですねー。
虚無的な結末も含めてあまりに斬新だったので驚かされました。
初出が1936年ですか…
★★★★


「失われた火星の秘宝」
ギャレス・クレインは最後の火星王の秘宝を発見した。
しかし、それを探していたのは彼だけではなかったのだ…


これも「アンタレスの星のもとに」のようなヒロイックファンタジーの要素がつまった作品、
こういったのが大好きなんでしょうね。
こっちは妙に「粋」という言葉が似合っています。好きだな。
★★★


「審判の日」
毛むくじゃら族のハールと鈎爪族のス・サンは忌まわしい地「むせび泣く石」に
空から星が落ちてくるのを見る、そしてその地にかつて世界を滅ぼした「おかしなやつら」がいるのを見るのだ…


これも改変もの、いたって普通かな。
解説でも語られていますが、ものすごく手塚治虫っぽいですね。
★★★


超ウラン元素
ここは月面、超ウラン研究所。
ここではウランに中性子を衝突させ、新たな元素を生み出す実験が行われていた。


どことなく物悲しいホラー。
こういった作品は嫌いじゃない、が地味だな。
★★★


「異境の大地」
ジャングルの奥地で見かけた人間は死んでいるようにしか見えなかった。
しかしその男は生きていた、脈拍は2分に1回、まばたきは100倍は遅いのだったが。
ガイドは言った「そいつはフナチだ」フナチとは?


SFの持つセンス・オブ・ワンダーというものをおおいに表現していると言えましょう。
それにしてもあまりに物悲しいラストが壮絶なのですが。
★★★★


「審判のあとで」
ここは月面基地、ここには現在二人の男が滞在している。
マーティンセンと、エラム、さきほど地球へ呼びかけの通信を行ったが応答はなにもない…


終末もの、似た題材の作品もこの本にはいろいろあったりするのですが
その中でも際立ってさみしい作品になっています。
★★★★


「プロ」
SF作家、バーネット。
彼はロケットを前にして感無量だった、彼の息子はこれにのって宇宙へと飛び立つのだ。


すごい、これは感動させられましたね。
プロとして見られてきた主人公が息子ののるロケット発射に
ドキドキしたり不安になったりするさまがコミカルに描かれますが
それによって生じる反転や達観が感動を呼びます。
たった20ページの作品ですが圧倒的な存在感でした。ベスト。
★★★★★


「プロ」は最高でした。
★★★★