脳髄工場 (小林泰三 / 角川ホラー文庫) ISBN:404347007X

脳髄工場

世界の崩壊と狂気を暗示した表題作ほか、過去から未来、
そして宇宙までを舞台にしたホラー短編集。
11編収録、312ページ。


なんてったって私の辞書では「やすみ」と打って変換すると「泰三」になるくらいですから
小林泰三氏久々の新刊、楽しみでした。
ホラーを土台にしながら内容はしっかりとしたSFになっているという
独特の読み味があってとても楽しかったです。
やはり小林泰三氏は短編がいいですね。


やや古めの作品が多いのですが書き下ろしの「脳髄工場」が
最も作者らしい作品で、安心できました。


「脳髄工場」は犯罪抑制のために開発された人工脳髄が市民権を得て
そして挙げ句は人工脳髄を付けていないものが異端視されるという世界で
天然脳髄で生き続けてきた少年を描いたものですが
人工脳髄を取り付けるシーンのグロさがたまらない。
まあ表紙絵そのままの光景が展開されるのですが
ここの表現はまさに小林泰三といったところで、
さすがといった感想に至ります。


他の作品では悪趣味が突き抜けるクトゥルーもの「C市」
変化球の吸血鬼もの「タルトはいかが?」がいい感じです。
ややバラエティさには欠けるのですが、
独特のグチャグチャが少ない分、作者に慣れていない方にもいけるかな?
なんて考えたりします。


★★★★