奇想小説集(山田風太郎 / 講談社文庫) ISBN:4062748630

奇想小説集

人間の性の部分を面白おかしく描いた短編集。
9編収録、394ページ。


戦後の高度成長期を舞台にした作品が多く、
我々から見ると少し古めの世界ということになります。
ここに変な、というか余計な発明ばかりしている素広博士が発明したものが
社会に巻き起こす騒動やらを描いたドタバタ劇が
「満員島」「自動射精機」「ハカリン」の3編ですが
どう考えてもこんなもん正式採用されないだろ、というようなものなのですが
もっともらしく導入の経緯まで説明されると「そんなのもありかもね」
なんて思わされるのがなんとも奇妙です。


そしてどこから見てもパロディである「陰茎人」やら「黄色い下宿人」なんてものまで読むと
作品の振幅は下のほうに振り切れているわけではないということにも気付かされるでしょうし、
なんといってもこの作品集のなかでの最高傑作「蝋人」の奇想っぷりを読まされると
より今の時代で作品を描いてほしかったな、なんて思わされます。


★★★★